日々のニュースをみれば、それがわかります。たとえば、M&Aによる買収されるリスク(株式交換による三角合併の自由化が4月に始まる)、コンプライアンス・リスク(長年の反社会勢力による影響力を排除できなかった三菱UFJ銀行の業務停止)、ガバナンスリスク(不二家事件)、風評リスク(牡蠣)、情報漏洩リスク、事業ドメインの基盤破壊現象(オリコなどノンバンク・消費者信用業界が過剰な利益をグレー領域の利息から得ていたことが法律厳格化により否定されたことによって従来享受していた事業基盤がゆらぎ一転大幅減益をもたらしたこと)というように、昨日までの勝利者はあっという間に負け組に転換してしまうのが今の経営環境であり、それが経営リスクそのものなのです。
それに対しては、戦略的なリスク・マネージメントが効果的です.
たとえば、情報技術は日本では,技術資産は外国より厚みがあるのに、生産額としては携帯電話のように世界シェアは小さいのは、規制のために日本発の技術のグローバル化ができないためだといわれています。では、そのような成長阻害のリスクをブレークスルーするにはどうしたらいいのでしょう。 そのための解決方法のひとつとして、ODAの外交的利用をはかり、ただ単にカネを外国におとすだけでなく、その地域における情報ネットワーク基盤整備のための社会資本に使用してもらい、それで買う機器類やノウハウを日本発の情報技術購入にあててもらうことによって、情報技術生産高の増大と地域化・グローバル化という戦略目標と現地社会資本の充実という社会的意義を同時に達成することができます。このような立体的かつ構造的な戦略は、それ自体がリスク・マネージメントなのです。いつも、戦略目標達成と戦術的なリスクヘッジとを他の価値実現とむすびつけて解決策を考えることが大切です。
企業価値の評価指標も、従来の土地や設備等のP/L(貸借対照表)上に計上される有形資産から、顧客基盤、従業員、サプライヤー、人事・組織等の無形資産にシフトしています。そのことは、今や経産省でさえ、フォーラム(OECD知的資産経営国際コンフェレンス、東京)によって更に認識を高める努力がされていることからも示唆されます。
その中でも、とりわけどの無形資産が将来の成長余力を生み出す源泉なのでしょうか?
有形資産を生かし収益性と成長性をもたらすエンジンは、モチベーション高く機動力あふれる人事・組織です。その意味で、成長余力を示す指標(value driver)として人事・組織の生産性が意味をもってきます。それは単なる労務ではなく、経営目標達成のための最も重要なKPIなのです。
M&Aによって合併した会社の7割は失敗に終わっているといわれています。その大半は、水面下で見えない資産である人事・組織に問題を生じたことが原因の一端ではないかというのが、ユニバーサル・ブレインズの仮説です。うまく融合し新しいビジョンや事業による成果を期待して、10年後の予測値である将来価値を現在価値に計算しなおしたNPVと実際の企業価値とは実は異なっていて、その乖離部分は、実は、「暖簾代」として計上されています(プラスもマイナスもありえます)。言い換えますと、DCF法で計算される一定の資本コストは本質的に将来の不確実性を内包した問題点をもっているので、それが人事・組織のもつ成長エンジンとしての予測可能性が現在価値に換算できるものであれば、それを指標化し、検証することができるはずです。そのためには組織・人事の生産性について科学的に観測できる手法が必須です。そうでないと単なる定性論や演繹的推論に終わってしまいます。これが「戦略人事と財務評価」のアプローチです。
戦略的人事制度は、人事制度によって戦略を実施するということでもあります。たとえば、トップラインの売上のみを人事評価基準にしたような成果主義であれば、経費削減は成果とならない以上、経営の効率性は達成できません。経費削減も効率性達成の一部として成果目標に掲げて評価しなくてはその戦略目標は達成できないでしょう。戦略との紐付けこそが人事の基本です。
もっとも、人の命を預かる産業や金融のように契約者保護のための鋭い規制が働く業種の場合、それがリスクとなります。そのような規制業種ではたしてイノベーションがなりたつのでしょうか。規制の枠の中でいかにイノベーションのインセンティブを働かせるかが職場のインセンティブを決定的に高めることができるかどうか、衰退するか伸張するかの分かれ目となります。そのためにリスクヘッジについても人事制度の工夫が意味を持ってくるのです。
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