内閣府 経済社会総合研究所
http://www.esri.go.jp/index.html 研究会報告書等 NO。41
「地域経営の観点からの地方再生に関する調査研究」平成21年4月
内閣府経済社会総合研究所
http://www.esri.go.jp/jp/archive/hou/hou050/hou041.html
以下は、同報告書からの一部引用です。
第V章 地域再生サポート施策
地域再生サポートの視点これまで政府は、様々な地域活性化策を実施するとともに、地域における活性化の取り組みを支援してきた。平成 20年に設立させた省庁横断的に地域再生事業を担う「地域活性化総合本部」の設置は、その一つの到達点ともいえる。
各省庁で取り組まれている地域活性化施策の情報を一元的に管理するとともに、あらかじめメニューを決めず、地域の主体的な取り組みを国が直接支援する「地方の元気再生事業」を創設している。
その中で、本調査研究において「地域経営研究会」のもとで検討してきた地域再生の方向は、現在国会で審議中の企業再生支援機構設立の視点に対応したものである。 苦境に立っている伝統産業、生活産業あるいは個々の地域の中核企業について、地域資源としての価値を的確に評価した上で再生プランを検討し、地方自治体、金融機関、民間企業等と協力して経営人材、資金をセットで供給していく支援方策、言い換えると M&Aの考え方で地域の中核的な「経営」を改善し、その成果を地域全体に波及させていこうとするものである。
単なるプロジェクト支援、補助金支援ではなく、一定のリスクを負いながら、戦略的な視点、地域経営の視点で地域再生に取り組もうとする考え方であり、本章では、それに対応した地域再生サポートについて検討する。
2.地域再生サポート施策の方向
平成 19年度より取り組まれている本調査研究では、地方企業の事業承継の課題、地方企業のM&A動向、地域経営人材の育成、地方企業の国際化、ファミリー企業、地域ファンドなどのテーマを検討してきたが、グローバル化、少子高齢化などのトレンドの中で、広い視野を持って地域の様々な「地域経営」の改革を進めていくこと、そのための人材を育成、あるいは供給していく体制の強化が必要とされている。
ファミリー企業が大半を占め、新しい時代に対応できる人材確保に苦慮している地場産業、依然として公営企業的な経営、生産性を改善できないでいる生活インフラ産業、これらの「地域経営」を単に守るのでは地域の活性化に連動していくことは難しい。保有する経営資源を再評価し、その価値を高めていく経営の質が求められている。
後掲するヨーロッパの事例は、我が国にそのまま当てはめることはできないが、今後の地域再生に向けて、参考になる情報を含んでいる。 例えば、EUの「地方」であるポーランドの経済を活性化するために、EUやポーランド政府は様々な地域ファンドを用意して、起業や外国企業の進出を支援している。経済省を中心に各省庁が強力な連携体制を組んでいることも特徴的である。
もちろん他の地域から遅れをとり、必死に取り組んでいる状況があるが、EUにおける地域ファンドの機能は、我が国の地域再生にも参考になるとみられる。
また、製造業の空洞化、若者失業者の増大を背景に構築されたイギリスの人材育成制度も興味深い。イギリスの国家技能資格制度と、それを支える教育機関である国立職業技能アカデミーは、民間企業の積極的な参加のもとで大きく発展してきている。
地方に多くの大学が立地する我が国において、地域経営の改善を進める人材の育成に大学の果たす役割は大きいと考えられる。しかし現状では、地域活性化を課題とする大学は急増しているものの、地域経営の視点で人材育成に取り組む大学はまだ少なく、地域再生にとって大きな題の 1つになっている。
すでに職業訓練校は我が国にも存在しているが、イギリスのような資格制度や民間企業との連携は十分とはいえない。
また、技能労働者の養成が中心で、「経営」という視点の教育は皆無といってよい。 さて、個々の地域で、的確な地域再生のプログラムが策定され、産官学が一体になって取り組まれることが期待されるが、現在審議中の企業再生支援機構の設立とともに、地域の意識を変えていくための情報提供は重要と考えられる。
地域経営の視点からみた地域再生サポートとして、地域への情報提供、あるいは地域とともに検討するテーマについて整理すると以下のようである。
(1)M&Aやファンドの活用地方におけるM&Aは、近年増加しているが、後継者不足による事業承継や建設業のように市場縮小による業界再編が中心になっている。もちろん、積極的な事業展開の手段としても活用されているが、企業アンケート調査にもみられるように、関心のない企業が半を占めている。M&Aを実施するか、ファンドを活用するかではなくて、M&Aやファンドの機能、考え方について正確な知識を持つことは、企業だけでなく地域おこし事業や自治体関係者にとても重要と考えられる。
(2)地域再生のファンドの育成現在、地域ファンドとして、ベンチャーファンドや再生ファンドが活動しているが、地方企業の認知度はかなり低い。地域ファンドは地域金融機関と補完しあいながら、地域経営の改善をサポートしていくとみられるが、現状の体制は資金力の面でも、人材サポート面でも不足している。今後は、地方の状況に対応した多様なファンドを育成していくとともに、的確な情報を地域に提供していくことが重要である。
(3)経営人材の育成と大学の活用大学では全国的に地域活性化に寄与していこうとする動きが活発化しており、「地域再生システム論」も既に 25の大学で取り組まれようとしている。しかし、地域経営の視点からると、地域再生において大学には、まだ色々な役割があると考えられる。直接的には、こからの「地域経営」を担える人材の育成が求められているが、地域活性化に取り組むネットワークの拠点として、域外の情報を入手できる拠点としての役割も大いに期待される。
(4)地域経営人材の供給体制「地域経営」の改革に必要な人材の確保は、焦眉の課題である。仮に資金的な支援を受けることができても、新たな経営人材が確保できないと経営改革は難しいことが多い。経改革には外の人の存在が重要で、客観的に経営資源を評価し、新しいやり方を導入できる人材の存在が、既存の人材の潜在能力も引き出すことになる。地域おこしの事例をみても、必ず他の地域からの移住者や Uターン者が大きな役割を果たしている。大都市に多く存する経営経験を持つ人々、特に団塊の世代をリクルートして供給する多様な方法を検討していく必要がある。
以上の課題には、国や地方公共団体が中心になって取り組むべきこともあるが、基本は地域の各界各層が協力して、地域の状況に合わせて様々な工夫をしながら、主体的に取り組んでいく必要がある。
(報告要旨)
(1)地方活性化の視点地方活性化というのがテーマになっているが、茫漠としたメニューを出すということではなくて、その結果どういう状態を求めているか、戦略的な視点が必要である。地域経済活性化で、どのようなブレークスルー・モデルがあるかということになるが、キラリと光企業が地方にあったときに、地域の資産のヒト、技術、モノ、無形なものを活用して、直海外との連携を図り、独自に成長を図ることはできないだろうかということで、少し唐突ではあるが、内外の地域間の直接協業モデルというものを考えてみた。
地方企業を再生することは、これまでは中央の助けを借り、例えば、有力企業のM&A産業再生機構のような形で再生支援が入っていた。また、海外のファンドを呼び込む方法もあるが、経済的リターン・コンシャスの話が常につきまとってくるので、それだけだと地域の生活の質の向上ということにすぐに結びつくのかどうか、あまりにリターンコンシャスが過ぎても問題になる。
そこで、日本の地域と外国の地域との間で中央を経由せずに直接協業の形で「ゆるい」企業連携や地域住民の元気度回復につなげようというシナリオを提示してみたい。以下は地方で独自体制を組んで、海外の地方企業と直接コミニュケーションをとり、グローバル化の中で地域産業の活性化に取り組むというモデルである。
2009/3/11 Yoshimoto Oikawa
3地域間の直接協業モデル!キラリと光る地方企業を発見し、再生(成長)のためのマーケティング協力・資本協力を図る。地方中央都市大都市第一次産業地方中央都市大都市第一次産業ヒト。モノ。カネ。情報日本西欧
(2)あまり日本では知られていないが、ヨーロッパの地方に拠点を持ちながら活躍している企業の例をいくつか紹介する。
そこではなぜヨーロッパでは大都会所在の大企業ではなくむしろ地方企業が元気なのか、その要因をさぐることができる。
まず、ペット産業のペットプランという会社がある。ロンドンから1時間離れているベッドタウンにある会社で、ギリス最大のペット医療保険の会社であり、年商は200億円ぐらいになる。事務所は戸建住宅街の中に立地しており、近くに居住する主婦をコールセンターの要員として雇用して、コスト面で非常に有利な形で機能している。営業も全てやっているので、ロンドン市内に事業所を構える必要がない。この会社は20年前にこの町に住む主婦が銀行から借りた25ポンドで始めた企業である。イギリス最大のサクセスストーリーだが、バッググラウンドがあれば、地方にも有力な企業を生み出すことができる。
次に、スウェーデンの片田舎にあるエルゴノミデザイン社の例を紹介する。エルゴノミデザインは、ストックホルムの近くに立地しているが郊外にあり、周りは大平原、周囲には建物が全くないところにある。冬には大雪原になるが、これはもともと森の中にある古い修道院の建物を改造した建物である。ここにデザイナーが50人ぐらい働いている。この企業は、北欧最大の工業デザイン会社としてよく知られている。
スウェーデンは、第2次大戦に参戦しなかったこともあって、いち早く高齢化社会に入り労働人口を確保する必要に迫られていた。
そこで国家政策として、スウェーデン国立障害研究所をつくった。エルゴノミデザインとは人間工学だが、人に優しいユバーサルデザインを研究する機関であり、そこからこの会社が生まれた。
ちなみに、下の図で示したのは製品の1つで「水差し」だが、航空会社、飛行機の中でスチュワーデスが使うものである。普通の水差しでは、水がたくさんあると腱鞘炎にかかりやすい。それを防ぐために、持ち手のところを広くして、たくさん水があっても腱鞘炎にかからないように、簡単に力をかけずに口を前に動かすことができる。しかも水だれがかからないという非常に売れた商品である。
ヨーロッパ有数の金融機関の本社、総本山だが、実は窓から見える風景は、馬がつながれていたりして、全く田舎の感じである。
ところで、最近スイスに本社機能を移す企業が続出しているという日経ビジネスの記事がある。ヤフー、イーベイ、グーグル、ニコラボ、ポロ・ラルフローレン、サンスターや日産自動車のヨーロッパ本社が例に挙げられている。その理由は、日経ビジネスによると、生活の質がいい、採用するときに国際的人材を確保できる、地政学上のメリットがある、実効税率が非常に低い、雇用の自由度が高い(解雇の自由度が高い)というようなことである。
(3)イギリスには、国家職能資格制度(National Vocational Education and Training System)というのがある。
ものづくりなどの人材育成は、伝統的な徒弟制度に依存してきたが、この制度が次第に崩れていく中で、 1980年代半ばに創設された。この資格は教養資格、一般職業資格、技術者向け資格に分かれており、義務教育、専門学校あるいは働きながら企業内でも修得することができる。むしろ、この新しい職業訓練制度を企業が積極的に取り入れている。 国立職業技能アカデミーが開講されており、現在、製造、建築、金融サービス、服飾小売、食品・飲料5つの産業分野別学校がある。 2008年までに 12の産業分野に拡大される計画である。組織的には「ハブ」と呼ばれる産業別の全国組織があり、そのまわりに車輪のスポークと呼ばれる地域別の組織があるネットワーク型の組織をつくっている。業種別、地域別に具体的な技能訓練が提供されていることで、地域活性化を下支えする制度にもなっている。これは日本では全く注目されていないが、非常に参考となる産業人材育成制度だと思う。
技術とか技能について、日本の場合は、先輩のわざを盗むとか、現場で指導を受けるという形になるが、ヨーロッパの場合は、企業が新たに身につけさせるという考え方がある。ことしの4月にBBCショックというのがあった。BBC放送で英国企業で働く人の40%が翌年離職しようとしているという調査報告があり、大騒ぎになったのだが、離職理由として、会社でのトレーニングがきちんとされていない。仕事上も直属上司のサポートがないのが理由ということであった。
ちなみに「 Engagement survey」は、日本語の適切な訳がないが、例えば会社への Engagementといえば、会社と一体化して会社のために何かやるという気持ちにコミットしているということである。いわゆる従業員満足度調査とは趣旨が違うが、そのような調査を向こうでは定点観察で実施している。ただし、農業についてはやっていないようだ。
最後に、経営者人材の教育であるが、日本では経営人材育成という観点があまりない。
教育体制として、例えばソニー・ユニバーシティとか企業内大学などはあるが極めて不十分である。ヨーロッパ企業では、もっと直接的に経営者を選抜する制度、例えば「アセスメント・センター」という機能がある。これは充実した経営者育成コースとあいまって、新しい未知の課題を自由に解決できる能力があるかどうかをみることで経営者層適材を早期に選抜する仕組みである。しかし、ここまで徹底した経営者育成制度は、ある種家族主義的な日本的企業風土の中ではなじみにくいものがあるかもしれない。
(4)イギリスの地域おこし地域の活性化ということで、イギリスの地域おこしの興味深い事例をいくつか紹介する。特集「地方が元気だ」(「クオリティ・ブリテン2007」駐日英国大使館発行)という本には、地域おこしの光る事例が紹介されている。
まず、リバプールは、ビートルズの出身地として知られているが、当地で主力産業が衰退する中で、ビートルズをネタに活気ある観光都市としていかに再生してきたかを紹介している。 中世の静かな村、ラドロウという田舎町は、人口1万人。ここは「食で町興し」で成功した。そこには、たった6軒の肉屋さんが、手作りのうまい料理を提供して、スローフードイベントをやっていたが、そこにフランスやレストランが参加するようになり、大変な経済効果が派生して、町おこしになっていくという事例。今やラドロウは「英国スローフードの首都」として市長が自分でソーセージを通販するなどユニークな活動をしている。
かと思うと、世界中の本の町の手本になったウェールズの田舎町、ヘイ・オン・ワイの事例も紹介されている。古本を集めて市を開いているうちに、非常に有名になり古本目当てに人が来るようになった。人口たった1,900人の村だが、10万人が来るようになり、クリントン米大統領も訪問したという話である。
それから、コーンウォールでは、「環境」で村おこしを始めた。ここはロンドンからはるかに遠いのにここを訪れた人は700万人。結構大掛かりな植物を使った建物をつくって、いかに環境をプロモートしているのかアピールしている。工事費は成功した場合に限って払えばいいということで、大手の建設業者が参加している。村興しの考え方の枠を超え、「地球興し」とその活動は広がりつつある。 オーガニックで村おこしの例もある。Linking Environment And Farmingということで、通称リーフ(LEAF)と言う。通常オーガニック商品は値段が結構高いが、実際は完全オーガニックでなくても結構いいものができる。農業者たちがやりやすい形でオーガニックをやっていこうという活動で、リーフという一つの「ブランド」にして広めていった。
それから、「精神」を保存する世界遺産の町というのは、スコットランドはグラスゴー近在の小村、ニュー・ラナークである。これは産業革命のときの町をそのまま残して世界遺産の町として登録し、景観だけでなく当時の「精神」も保存する貴重な村として200人が移住し、実際の生活の場としても生かされている。なんと今は工場跡地の訪問者は年間4万人にのぼりそのうち10万人から施設入場収入があるという。在の小村、ニュー・ラナークである。これは産業革命のときの町をそのまま残して世界遺産の町として登録し、景観だけでなく当時の「精神」も保存する貴重な村として200人が移住し、実際の生活の場としても生かされている。なんと今は工場跡地の訪問者は年間40万人にのぼりそのうち10万人から施設入場収入があるという。
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